高齢者の負担で若者に一時金を──「世代間格差」解消へ英シンクタンク

Source: newsweekjapan

 

<高齢化が進むベビーブーマー世代を支えるミレニアル世代とZ世代の負担が過大にならないよう25歳で受け取る「市民相続」。これで世代間戦争は回避できるか?>

1981~1996年生まれの「ミレニアル世代(現在22~37歳)」と1996年~2011年生まれの「Z世代」には、25歳になった時点で「市民相続金」として1万ポンド(約1万3500ドル)を支給するべきだと、イギリスのシンクタンクが提言した。高齢化が進むベビーブーマーと若者世代の間の世代間格差を埋めわせ、若者が将来にもっと希望がもてるようにするのが目的だ。

中・低所得層のための研究を行う英「レゾリューション財団」は、一人1万ポンドの財源は、年金受給者を対象にした増税で賄うことを提案する。拡大を続ける世代間の生活水準格差を埋めるため、高齢者から若い世代に所得を再分配する。ただしこの資金が確実に若者の教育費や住宅費、起業資金や将来のための貯蓄に回されるようにすることを義務付ける。

「ばらまき」にしても足りない?

この異例の提言には、賛成派と反対派の双方から批判の声が上がっている。反対派は、給付は「近視眼的なバラまき政策」にすぎないと主張。賛成派は、1万ポンドぐらいでは起業にも奨学金の返済にも間に合わず、焼け石に水だと指摘する。

レゾリューション財団によれば、イギリスではミレニアル世代の10人に6人が20代後半を迎えており、政府から1万ポンドの給付金を受け取ることで、彼らの財産はほぼ倍増するという。ベビーブーマー世代とミレニアル世代・Z世代の経済格差を是正するための足掛かりになるかもしれない。

5月8日に発表された提言は「高齢世代よりも、若い世代の方が経済的リスク負い、資産も少ない。私有財産権を前提とした民主主義を維持するためには、この不均衡を是正する必要がある」と指摘。提言作成を委託した保守党のデービッド・ウィレッツ上院議員は「異なる世代を公平に扱う上でイギリスが直面している課題は、もはや誰も無視できない」と述べ、「我々には行動する義務がある」とした。

レゾリューション財団が2017年に実施した世論調査によれば、「両親より良い生活を手に入れられるか」という質問で、イギリスは先進国の中で最も悲観的な材料が多い国の一つだった。

ミレニアル世代の3人に1人は生涯持ち家を所有できそうにないし、政治アナリストのリンゼイ・ジャッジによれば「若者たちの収入の大半は住宅費に消えて、それでも親世代より小さな賃貸物件にしか住めない」と指摘する。

教育や起業の展望も暗い。英財政学研究所が2017年に発表した報告書によれば、イギリスの学生は平均5万800ポンド(約740万円)、より貧しい家庭の出身なら5万7000ポンド(約830万円)の借金を抱えて卒業することになる。

また英国家統計局によれば、イギリスの起業件数は年間41万4000件にのぼるものの、破綻件数も32万8000件にのぼる。1万ポンドの給付金では起業して事業を継続のは難しそうだ。

一時金は解決策にはならない

一方で、高齢化による財政負担は年々重くなっている。レゾリューション財団の上級経済アナリスト、スティーブン・クラークは、これから高齢化が進むベビーブーム世代が退職して年金や住宅手当などの各種手当を受給するようになるにつれ、その財政負担は劇的に増加すると言う。その負担を担うことになるのが、既に十分な負担を担っているミレニアル世代だ。

今回の提言には、各方面から批判の声が上がっている。経済問題研究所は、高齢者から吸い上げたお金を若者にあげるやり方は、低所得の高齢者を不公平に「罰する」ものだと指摘。同研究所のケイト・アンドリューズはCNBCに対して、「高齢者にも低所得者がいるし、若者にも高所得者がいる。年齢を基準に現金を移動させるやり方は、進歩的とは言い難い」と語った。「一時的なバラまきなどを行えば、若者たちが大人になるための壁を乗り越えようとするときのやる気を挫きかねない」

若者の経済的な未来が不安なのはイギリスだけではないようだ。アメリカの複数のシンクタンクも悲観的な報告書を発表している。

たとえば人材斡旋会社チャレンジャー・グレイ&クリスマスが5月7日に発表した報告書は、伝統的な小売店がオンライン小売業者との競争に負けて潰れたため、学生の夏のアルバイト先が減っていると指摘。10代の若者の労働参加率は34.8%と、1989年の56%から20ポイント近く下落している。

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