【雨宮 紫苑】切符の料金がわからない…「世界一」の日本の電車、実は使いにくい? 五輪もあるのに、これじゃ難しすぎる

Photo: goinjapanesque.com

 

ドイツ在住のライター、雨宮紫苑さんは、毎年日本に帰国し、「いま」の日本を外から内から見て実感、そこで感じたことを『ドイツ人と日本人 比べてみたらどっちもどっち』という一冊にもまとめている。

2020年に東京五輪が開催されることとなり、2年後にむけて日本の長所を海外にアピールすべきタイミングだが、「日本の長所と言われているところ、これでいいのか?」と思うところが多々あると雨宮さんは言う。日本の「おもてなし」や「サービス」については2回に渡ってお伝えしたが、今回は世界一との誉れ高き「日本の電車」についての「これでいいのか?」。雨宮さんは日本の電車は改善しないと外国人には使うハードルが高すぎると言う。それはどういう意味なのか。

日本人の私が駅の中で迷子

「なん……だと……?」

都営大江戸線の牛込神楽坂で電車に乗り、帰宅する途中のときのこと。わたしは、都営浅草線蔵前駅にいた。

京浜急行線沿線に住んでいるので、都内から家に帰るときは、京急線に乗り入れている都営浅草線を使うことが多い。さて、どこで大江戸線から浅草線に乗り換えようか。東京タワーがある大門で乗り換えてもいいが、そうすると、うんざりするほど長い地下道を歩かなくてはいけない。せっかくならいつもとちがう駅で乗り換えようと、浅草のひとつ手前、蔵前駅で降りてみた。

ホームから何度かエスカレーターを乗り継いでやっと見つけた改札を通り、『都営浅草線蔵前駅』方面の出口をめざして地下道を進む。ふたたび何度かエスカレーターに乗り、やっと地上に出た。これだけでもう、電車を降りてから5分くらい経っている。

地上にあった案内に従って右手に歩き出すと、少しし看板が見えた。

『都営浅草線蔵前駅 250メートル』

そして、冒頭のセリフがこぼれるわけである。5分歩いてさらに250メートルって、もはやちがう駅じゃないか……。

ズンズンと夜道を歩き続けると、やっと浅草線蔵前駅が視界に入ってきた。しかし品川・横浜方面へ行きたくば、成田空港方面のホームを突っ切って、また一度上へあがって方向転換しなくてはいけないらしい。

なんだよもう、なんの恨みがあるんだよう……。

力尽きたわたしはそのまま成田空港方面の電車で一駅戻り、おとなりの浅草駅で浅草線に乗り換えた。なんという骨折り損。ほろ酔い気分も台無しである。

5分歩いた上で「250m」というのは、「徒歩9分」くらいのもの。近い駅なら歩けるかも Photo by iStock

「日本の電車」の素晴らしさとは

こういった乗り換えトラブルや駅の出口、改札まちがいというのは、都内の電車ユーザーならばだれしもが経験したことがあるだろう。関西なら、梅田駅と大阪駅あたりが有名なトラップゾーンだ。

しかしその一方で、「日本の鉄道事情はすばらしい」と言う人もいる。理由としては、定時運航率が世界トップレベルであること、乗客がきれいに整列乗車をしていること、駅や車内が清潔であることなどが挙げられる。

なるほど、わたしが住んでいるドイツを引き合いに出して考えれば、たしかにそのとおりだ。ドイツの鉄道事情は、控えめに言っても「ひどい」。時間通りには来ないし、停車位置も適当だし、運休もザラ。発着ホームが変わることもしょっちゅう、線路の上で立ち往生も日常茶飯事。そう考えればたしかに日本の電車は、それはもうめちゃくちゃ便利である。間違いない。

しかし残念ながら、それはあくまで玄人向けの便利さであり、そこにわかりやすさがないのもまた事実である。

不正確だけれど簡単なドイツの電車

人身事故やちょっとした停電で電車が15分遅延すると、それだけで首都圏の主要駅には人が殺到して機能不全に陥る。平時でも、整列乗車しないと人が多すぎて乗れない。

それを見ていると、「定時運行しないとすぐにパンクするギリギリ運営だから定時運行&整列乗車が必要なのでは」なんて思ってしまう。もちろん、定時運行を実現する技術の高さと働く人の努力は素晴らしいのだが。

ドイツの電車のひどさは前述したとおりだが、おもしろいのは、「それでもどうにかなっている」という現実である。

当然のように運休するし遅延するし、電車のドアが開かなかったり車内の床にビール瓶が転がっていたりもするが、日本のように駅のパンクは見たことがないし、駅で迷子になったこともない。しいて言えば、サッカーの試合後の電車がカオス状態だということくらいだ。

もともと電車の本数が少なく乗車率が日本より圧倒的に低いから、駅や電車内の人口密度がそこまで高くない。だから、整列乗車はいらない。そうなれば、電車が一定の場所に停車する必要もなくなる。

日本のようにさまざまな路線や改札があるわけではないから、駅の構造も非常に単純だ。

ドイツの電車は雑で不便。これは事実である。しかしシステムは非常にシンプルだから、「迷う」ということはまずないのだ。

切符の買い方がわからない

日本的な『玄人向けの便利さ』と、ドイツのような『初心者向けの不便さ』、どちらがいいとは一概に言うことはできない。それは、国によって需要がちがうからだ。

ただわたしが思うのは、多くの国はドイツのような『初心者向けの不便さ』がまかりとおっている国であり、それに慣れた人がたとえばオリンピックを機に日本に来たらどうなるのだろう……ということだ。

たとえば、東西線が地下鉄かJRかそれ以外かがわからない人は、どうすればいいのだろう。

切符を買うのも、なかなかハードルが高い。わたしは中学生の時からスイカを使っていたので、大学に入って定期を忘れたときにはじめて切符を買った。値段を確認するために路線図を見るも、すでにスマホで乗り換えを調べるのが一般的だったから地理感覚が全くなく、目的地がどこにあるかがわからない。券売機の仕組みもわからない。結局、駅員さんに教えてもらった。

そういえば数年前に福島県を旅行したとき、人生で初めて『駅員さんに切符を見せる』ことを経験した。パスモで乗車したのに、下車時は駅員さんチェックである。謎だ。

去年行った山口県で初めて無人駅を見たときも、「切符はどうやって買うんだ?」と疑問だった。みんな、どうしているのだろう。いや、利用者がいないのか……?
都内は都内でよくわからないが、地方は地方でこれまたよくわからない。日本の鉄道事情は、摩訶不思議である。

ちなみに後日調べてみたところ、無人駅でも「乗車駅証明書発行機」があれば証明書を発行し、降りる駅でそれを見せて支払うらしい。乗る駅も降りる駅も無人の場合は、車内で車掌さんに払うそうだ。

スマホで調べなければ路線がわからない

駅にいろんな表示をしたり、Wi-Fiを整備したりするなど、鉄道会社が努力しているのもよくわかる。しかしそれでも、「知らなければわからない」ことが多すぎやしないだろうか。

たとえば券売機。ドイツの券売機は、目的地欄で「BE」とタッチすれば「ベルリン中央駅」「ベルリン北」「ベルリンシティー」のように選択肢が出てくる。到着地を設定すれば、何時何分にどこ行きの電車がどのホームから出るのかが表示され、そのなかから乗りたい電車を選べば金額が出て切符を買える。

券売機で乗り換え案内を印刷することも可能だし、新幹線のような特急電車も同じ要領で買い、座席指定もできる。

グループチケットやワンデイチケットも買えるし、それぞれの使用方法も書いている。もちろん、多言語対応。

ドイツの券売機。タッチパネルで行き先が出てくるので分かりやすい Photo by iStock

大きな駅では、駅に入った瞬間に目に入るばかでかい電光掲示板があって、先1時間くらいの電車の発着情報がズラっと表示されている。遅延はすぐにわかるし、ホームもわかる。

日本の券売機はやり方を知らないと使いづらいし、電光掲示板があるのは改札やホームの一部だけだ。ドイツのように、日本でも『だれでもわかる』システムにできないものだろうか。

たとえば切符を買う際は金額ではなく駅名の入力式にするとか、全線共通の券売機を設け、買った切符を使うにはどこに行けばいいか教えてくれるようにするとか。

そうすれば、路面図がわからなくても切符が買えるし、どの路線がどれだけ早く安いのかが比べやすくなる。

さらに、乗り換え先を指定したらその路線への乗り換えに便利な車両番号が見れたり、目的地の駅の出口一覧とそれに近い車両番号もチェックできたりすれば、かなり便利になる気がする。

たとえば、券売機で目的地に『東京駅』と入れたらいくつかの路線と値段が出て、比較して乗りたい電車を選ぶ。そしたらその路線の乗り場案内も出る。必要に応じて時刻表や地図の印刷も可能にする。東京駅で『丸ノ内口』に出る設定にすれば、「××線の〇車両目がおすすめ」など表示される。

そうすれば、東京の電車に乗り慣れていない人も、どうにかたどり着けそうではないだろうか。

あと、京急線ではたまに見るのだが、特急や快速、普通電車の停車駅がランプの点灯によってわかるようにする仕組みも広まっていってほしい。

「スマホなしでも、はじめて来た人がたどり着けるように」と考えれば、まだまだ改善できることはあるんじゃないだろうか。

誰に聞けばいいかわからない

あと、人に聞けない雰囲気も問題だ。都内の駅で通りすがりの人をとっ捕まえて電車を聞くのは、なかなか勇気がいる。しかし駅員さんがいる改札横もなかなか混雑しているし、みどりの窓口にいたっては、どこにあるかすらよくわからない。

ドイツであれば、『i』と書いてあるインフォメーションに行けばたいていどうにでもなる(ただし夜や日曜は閉まっている)のだが、日本ではそうはいかない。

大きな駅には、京都のように『総合案内所』を構えて、路線関係なく総合的に案内する場所をデカデカと作ってほしい。もちろん、観光案内も含めて。

日本の電車はたしかに時間に正確で、便利だ。しかしむずかしい。「たどり着けないかもしれない」という不安は、観光客にとってとてつもないストレスになるだろう。とくに東京五輪のように試合時間が決まっている場合、スムーズに移動ができないのは致命的な問題になるかもしれない。

あまり電車慣れしていない初心者ユーザーのひとりとして、東京五輪の前に、外国人や初心者にもやさしい便利さをお願いしたいところである。

Source :

livedoor

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